電気蜘蛛は毒蛇の夢を見るか？

タリスもようやく一本目…
追記から!!

「…それで？お前、今回は許可の上…なんだろうな？」

「あったりまえじゃん、いくらなんでも毎回許可なしで出撃はしないって！」

ホウエン軍領土・『小島の横穴』。
今回はちゃんと大将殿に許可を取ってきたらしいヒムカと、ここの防衛という名目で赴いた。
すでに、完全にわれわれの理解の範疇を超えた相手…ミュータントといったか…に何度か行きあたっていた。
そして、目の前にいるこの少女も、またそうなのだろう。

「……おまえたち、だれ？」

童女、なのだろうか。
いや、外見は明らかにもうじき成人、といった部類だ…ただ、内面的な部分は発展途上、と言ったところか。

「…けどさー、残念極まりないよな、こんだけミュータント？には行きあたってるのに、サイボーグってのには全然当たんないんだもんなぁ…もし居れば、解体でもできたのに」

そうぼやいたヒムカの言葉に、目の前の少女がぴくん、と反応する。

「……かいたい…って、ことば、しってる…きかいのこと、こわす、こと」

「そうそう、お嬢ちゃんよくわかってるじゃん？」

楽しそうに言うヒムカに対し、少女のまとう空気はその瞬間、一変した。
何か、金属を叩き合わせるような音が響いたかと思うと…少女の腕は、金色の腕に青い爪を持つ、獣のものへと変化していた。
パチッ、と周囲に電気が走る。

「…………アル、おまえたちのこと、こわす…かいたいなんて、させない…!!!!」

横穴の損壊状況などお構いなしに、めくらめっぽうにエネルギーの塊のようなものを放ち続ける。
そのうち、緑色に光るエネルギー体がヒムカを直撃した。

「!!?ってぇ…なんだよ今の球…当たり所悪かったら死んでたって！」

…が、そうぼやくヒムカの口元は笑っていた。
どういうわけか、満身創痍のはずなのに…いや、だからこそか。
…こいつは、傷が増えれば増えるほど燃えるらしい。
そして。

「…けど、今のでわかった、ちょっとタリス、あの子引きつけといて！」

「は!?」

「俺に本気出させたらどうなるか、教えてやんないとね！」

…正直何を言っているのかよくわからんが、とにかく今、このアルと名乗った少女をどうにかするにはヒムカの言うことに従っていた方がよさそうだ。
そして、どうもあの緑の球体がヒムカによく効くと認識したらしい少女は、私を電撃弾で足止めすると、矛先をそちらにむけた。

「………おねえちゃんやおにいちゃんをこわそうとするなら、アルが、ここで…」

「こわす」

「おっと…そりゃどうかな？悪いけど、女の子だからって容赦はしないよ？」

…正直、こいつの武装のメカニズム云々はよくわからん。
だが、今回やってることは大体理解できた。

「さっきの相当痛かったよ？から、倍返しね!!」

「!!!!!!」

単に跳ね返すだけではない、エネルギー量を倍にして跳ね返す武装。
華奢な少女の体は衝撃で吹っ飛ぶ。
…全身に傷を負ったこの状態で、これ以上の戦闘は不可能だろう。

…と。

「!!?おいアル、アル!!しっかりしろ!!…２対１は厳しいな…」

新手…今吹っ飛ばしたアルと年のころは同じくらいの少年が現れた。
急いで臨戦態勢をとるが、彼はアルを回収してそのまま帰還するつもりのようだ。
ミュータントというものの持つ身体能力のなせる技なのか、私もヒムカも追い付くことができなかった。

「…ヒムカ、立てるか？」

「当然…このくらいならまだ行けるって！」

「…これ以降も戦闘は激化する一方だろう、応急手当てくらいはしておいても罰は当たらん」

そう言って、ヒムカを半ば強引に手当てしていたところへ、通信が入る。
…やけに電波が荒くてよく聞き取れないが、声は聞きなれたものだった。

「スガか？」

「…そ…だ……前た…状況…は？」

「相手のミュータントと交戦、戦闘不能にはしたが増援が来て逃げられた…私とヒムカも無傷ではない」

ここまで電波の状況が悪いと、相手にどれだけ届いているかも不明だが、とりあえずかいつまんで状況を説明した。
スガによると、艦隊の戦況もあまり芳しくないようだ。
…もうしばらくここにとどまるというヒムカといったん別れ、弾薬の補充と傷の手当てに戻る。




……………

打てた！
タリス1本目!!
同じネタをアル視点からも書こうと思いましたが思いとどまりました。
ヒムカさん全面的に、あと少しですがジルニトラさんとスガさんお借りです！
アルはこのままジルニトラさんに拠点に連れ帰られてここでリタイアします。