ちょっと書くしかないと思ったSSを。
タリスの父親の視点で進むお話。
時系列的には、タリスとヒムカさんが結婚のご挨拶をしに行った時のお話になります。
一応、イロさんのこちら↓
http://natsunosoda.kakuren-bo.com/%E6%9C%AA%E9%81%B8%E6%8A%9E/%EF%BC%9F%EF%BC%9F%EF%BC%9F
のSS読むと色々全貌がつかめるかもしれない。
【CAUTION!!】
リンク先死亡表現注意です!
では、追記から本編をどうぞ。
タリスの父親の視点で進むお話。
時系列的には、タリスとヒムカさんが結婚のご挨拶をしに行った時のお話になります。
一応、イロさんのこちら↓
http://natsunosoda.kakuren-bo.com/%E6%9C%AA%E9%81%B8%E6%8A%9E/%EF%BC%9F%EF%BC%9F%EF%BC%9F
のSS読むと色々全貌がつかめるかもしれない。
【CAUTION!!】
リンク先死亡表現注意です!
では、追記から本編をどうぞ。
―――ホウエン・サイユウシティ某所。
妻には散々落ち着くように言われているが、朝から私は落ち着けずにいた。
…ことの起こりは一週間前。
軍にいる長女から電話が入った。
確か、先のゴタゴタで左目と左肩を負傷したときいていたが、大事はなかったようで安心した(もっとも、左目の傷は絶望的だそうだが)。
…それはいい。問題はそのあとだ。
『紹介したい人がいるから、一週間後に挨拶に行く』と、長女はそう言い残して電話を切った。
……それは、その、そういう年齢だし、そういう相手がいたところで別段驚くこともないのかもしれないが…。
「…お父さん、いい加減座っていて下さいな、みっともない」
妻のあきれ声が耳に痛い。
仕方なくリビングで妻の淹れた紅茶を飲んで一息つく。
…そのすぐ後だった。
カチャリ
来たな、と思った。初めに応対したのは長男だった。
「ね…姉ちゃんがザキ兄ちゃんとスガ兄ちゃん以外の男連れてきたあああああああ!!!!!!」
思わずカップをとり落としそうになる。
いや、あり得ないとは思っていたが、せめて私も顔を知っている彼らだったらどれだけ気が楽だっただろう。
長女にくっついてリビングに案内された青年は、やはり軍人なのだろうが、見覚えはなかった。
…なかったはず、だ。
だが、このどこかで見たたたずまいはなんだろうか。誰か、私の知った相手の面影を感じさせた。
「……座りなさい」
精いっぱい平常心を保ちながら、次女と長男を部屋に下げると、二人を席に座らせた。
「…お、お邪魔します…」
慣れない家に通されたからだろうか、若干委縮した様子で声を出す。
私もそれを気遣っている余裕などなかったが、妻の「気負わなくていいですよ」という言葉に少し安心したらしかった。
「そ、その、父様、母様…一週間前に連絡はしたかと思いますが、彼がその…私の、紹介したい人、で…」
「…大丈夫だよタリス…ホウエン海軍所属の、ヒムカといいます。今日は、時間を作っていただいてありがとうございます」
丁寧に、だが若干まだ緊張した面持ちで話をしてきた青年は、そう、確かに名乗った。
その名前にも、聞き覚えがあった。
まだ、私がもっと若いころ聞いた名前だったはずだ。
…そのヒムカ君が次に発した言葉は、私が一番聞きたくて、そして、一番聞くのを恐怖していた言葉だった。
「……お嬢さんを、僕にください」
…まっすぐな眼をしていた。
彼の、長女を幸せにするという意志は固いのだろう。
その表情からだけでも、その思いは十分に感じ取れた。
…こういうとき、絶対に幸せにしますとかなんとか、そういうことを言う男は多くいるが、そんなことをわざわざ言わなくても、彼になら長女を任せてもいいと思った。
「…見ての通りの跳ねっ返りだが、それでもいいかね?」
「はい……それと、無理なお願いなのは承知の上でお願いします…僕に、テイル姓を名乗る許可をください」
一瞬私から目をそらし、やっぱり無理なお願いですよね、と苦笑する彼を制する。
「君がそれを望むなら」
そこまで深く、我が家の一員になりたいのなら止めはしない。
…一人、息子が増えてしまったな。
「…そう、出来ることなら…早く、孫の顔がみたいな」
「と、父様!!!」
黙りこくっていた長女が真っ赤になって顔を上げる。
…まったく、こういうところは軍に入っても全く変わらない。
「……お父さん?」
いきなり首筋にかかる細い圧力は、妻の腕のものだったと気付く。
完全に首を締めあげる体勢だった。
「…いきなり若い二人にそんなことを言うものではありませんよ?」
妻の声は優しげだが、反して首にかかる圧力はどんどん増していった。
なんとか腕を振りほどき、二人に向き直る。
「い、いや、真面目な話…元気なうちに、孫を抱かせてほしい」
そう言うと、二人も照れたように笑った。
「…じゃあ、あまり長居をするのも迷惑ですから…今日はこれで」
「あら、お夕飯くらい支度しますよ?」
「いえ、それはまた次の機会に」
そうですか、と少し残念そうな顔をした妻は、少し待っていてくださいね、と言って奥へ入ると、小さなカードを2枚持ってきた。
そう言えば、趣味でやっているガーデニングで、アザレアの花が綺麗に咲いたから押し花にしたと言っていたか。
「…じゃあ、これをお土産にどうぞ?若い二人の門出に、幸がありますように」
旅立ちくらい、家族の愛情に真っ向から包まれても罰は当たりませんよ?と妻は付け加える。
それに若干の戸惑いを見せながらそれを受け取ると、もう一度一礼して、二人は家を出て行った。
……………
「……お父さん、気づいていたんでしょう?」
「…途中からな」
「…言ってあげなくてよかったんですか?ヒムカさんのお父さんのこと」
その妻の問いに、小さく首を横に振る。
「それはできない…彼に…ミュエ君に、息子に会うことがあっても自分のことは言うなと言われていたからな」
…まったく、不器用な男だと思う。
せめて最期のひと時、ヒムカ君を愛していたことを伝えて逝っていたら…そんなことを考えてしまうのは無粋だろうか。
もっとも、愛情表現の不器用さはうちの長女も負けてはいないが…すまんな、ヒムカ君。
「…だから」
今度は、私たちが…彼を家族として愛そうじゃないか。
…君がずっと彼の人生の裏から彼を愛していたのと同じように。
……君が逝ったこの世界で、君が彼に注いだのと同じだけ…いや、それ以上の愛情を彼に。
「(…もっとも、それを一番やらなければいけないのは)」
…彼の妻になる、私たちの長女…タリスなのだろうが。
……………
う、打てたあああああああ…!!!!!
んなわけで、アフター番外編でした!エアーいっぱいでお送りいたしました!!
イロさんの方をお読みでない方のためにちょっと解説しておくと、ヒムカさんの実のお父さん・ミュエさんとタリスの父親は軍人時代の顔見知り、という裏話。
ちなみに、アザレアの花言葉は『愛されることを知った喜び』。
妻には散々落ち着くように言われているが、朝から私は落ち着けずにいた。
…ことの起こりは一週間前。
軍にいる長女から電話が入った。
確か、先のゴタゴタで左目と左肩を負傷したときいていたが、大事はなかったようで安心した(もっとも、左目の傷は絶望的だそうだが)。
…それはいい。問題はそのあとだ。
『紹介したい人がいるから、一週間後に挨拶に行く』と、長女はそう言い残して電話を切った。
……それは、その、そういう年齢だし、そういう相手がいたところで別段驚くこともないのかもしれないが…。
「…お父さん、いい加減座っていて下さいな、みっともない」
妻のあきれ声が耳に痛い。
仕方なくリビングで妻の淹れた紅茶を飲んで一息つく。
…そのすぐ後だった。
カチャリ
来たな、と思った。初めに応対したのは長男だった。
「ね…姉ちゃんがザキ兄ちゃんとスガ兄ちゃん以外の男連れてきたあああああああ!!!!!!」
思わずカップをとり落としそうになる。
いや、あり得ないとは思っていたが、せめて私も顔を知っている彼らだったらどれだけ気が楽だっただろう。
長女にくっついてリビングに案内された青年は、やはり軍人なのだろうが、見覚えはなかった。
…なかったはず、だ。
だが、このどこかで見たたたずまいはなんだろうか。誰か、私の知った相手の面影を感じさせた。
「……座りなさい」
精いっぱい平常心を保ちながら、次女と長男を部屋に下げると、二人を席に座らせた。
「…お、お邪魔します…」
慣れない家に通されたからだろうか、若干委縮した様子で声を出す。
私もそれを気遣っている余裕などなかったが、妻の「気負わなくていいですよ」という言葉に少し安心したらしかった。
「そ、その、父様、母様…一週間前に連絡はしたかと思いますが、彼がその…私の、紹介したい人、で…」
「…大丈夫だよタリス…ホウエン海軍所属の、ヒムカといいます。今日は、時間を作っていただいてありがとうございます」
丁寧に、だが若干まだ緊張した面持ちで話をしてきた青年は、そう、確かに名乗った。
その名前にも、聞き覚えがあった。
まだ、私がもっと若いころ聞いた名前だったはずだ。
…そのヒムカ君が次に発した言葉は、私が一番聞きたくて、そして、一番聞くのを恐怖していた言葉だった。
「……お嬢さんを、僕にください」
…まっすぐな眼をしていた。
彼の、長女を幸せにするという意志は固いのだろう。
その表情からだけでも、その思いは十分に感じ取れた。
…こういうとき、絶対に幸せにしますとかなんとか、そういうことを言う男は多くいるが、そんなことをわざわざ言わなくても、彼になら長女を任せてもいいと思った。
「…見ての通りの跳ねっ返りだが、それでもいいかね?」
「はい……それと、無理なお願いなのは承知の上でお願いします…僕に、テイル姓を名乗る許可をください」
一瞬私から目をそらし、やっぱり無理なお願いですよね、と苦笑する彼を制する。
「君がそれを望むなら」
そこまで深く、我が家の一員になりたいのなら止めはしない。
…一人、息子が増えてしまったな。
「…そう、出来ることなら…早く、孫の顔がみたいな」
「と、父様!!!」
黙りこくっていた長女が真っ赤になって顔を上げる。
…まったく、こういうところは軍に入っても全く変わらない。
「……お父さん?」
いきなり首筋にかかる細い圧力は、妻の腕のものだったと気付く。
完全に首を締めあげる体勢だった。
「…いきなり若い二人にそんなことを言うものではありませんよ?」
妻の声は優しげだが、反して首にかかる圧力はどんどん増していった。
なんとか腕を振りほどき、二人に向き直る。
「い、いや、真面目な話…元気なうちに、孫を抱かせてほしい」
そう言うと、二人も照れたように笑った。
「…じゃあ、あまり長居をするのも迷惑ですから…今日はこれで」
「あら、お夕飯くらい支度しますよ?」
「いえ、それはまた次の機会に」
そうですか、と少し残念そうな顔をした妻は、少し待っていてくださいね、と言って奥へ入ると、小さなカードを2枚持ってきた。
そう言えば、趣味でやっているガーデニングで、アザレアの花が綺麗に咲いたから押し花にしたと言っていたか。
「…じゃあ、これをお土産にどうぞ?若い二人の門出に、幸がありますように」
旅立ちくらい、家族の愛情に真っ向から包まれても罰は当たりませんよ?と妻は付け加える。
それに若干の戸惑いを見せながらそれを受け取ると、もう一度一礼して、二人は家を出て行った。
……………
「……お父さん、気づいていたんでしょう?」
「…途中からな」
「…言ってあげなくてよかったんですか?ヒムカさんのお父さんのこと」
その妻の問いに、小さく首を横に振る。
「それはできない…彼に…ミュエ君に、息子に会うことがあっても自分のことは言うなと言われていたからな」
…まったく、不器用な男だと思う。
せめて最期のひと時、ヒムカ君を愛していたことを伝えて逝っていたら…そんなことを考えてしまうのは無粋だろうか。
もっとも、愛情表現の不器用さはうちの長女も負けてはいないが…すまんな、ヒムカ君。
「…だから」
今度は、私たちが…彼を家族として愛そうじゃないか。
…君がずっと彼の人生の裏から彼を愛していたのと同じように。
……君が逝ったこの世界で、君が彼に注いだのと同じだけ…いや、それ以上の愛情を彼に。
「(…もっとも、それを一番やらなければいけないのは)」
…彼の妻になる、私たちの長女…タリスなのだろうが。
……………
う、打てたあああああああ…!!!!!
んなわけで、アフター番外編でした!エアーいっぱいでお送りいたしました!!
イロさんの方をお読みでない方のためにちょっと解説しておくと、ヒムカさんの実のお父さん・ミュエさんとタリスの父親は軍人時代の顔見知り、という裏話。
ちなみに、アザレアの花言葉は『愛されることを知った喜び』。
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