電気蜘蛛は毒蛇の夢を見るか？

三回戦で共闘してからようやくアルは自分の気持ちを自覚したんだろうなぁ、という妄想のもと、インターバル期間利用して書いてみるよ!!
全力春記事注意報！
追記から!!

「はかせ」

「ん？どうしたんだアル」

トージョウから引き揚げて以降…いや、それ以前からかもしれないが、アルデラにはずっと解けない疑問があった。
…とはいえ、アルデラにしては珍しく、自分の頭の中でぐるぐると考えていただけなので、解けるはずもないのだが。

「『すき』って、なぁに？」

もちろん、その意味そのものは理解しているつもりだ。
はかせのことも、リモスおねえちゃんやリトおにいちゃんのこともノノのことも、もちろん他のISHのおにいちゃんやおねえちゃんのことも大好きだ。
でも、その『好き』と違う『好き』がこの世界に存在することに、最近気づいた。

……………

…きっかけは、前にノノと話していた時。
話している最中、ジルが会話に入ってきた。
その時のノノは、ジルをばしばしと叩いたり、乱暴なことをしていたけれど、顔はすごく楽しそうだった。
自分だったら、嫌いな人にこんな楽しそうな顔はしないだろうな、と思って、そのあとにノノに聞いてみた。

「…ノノは、ジルのことがすきなの？きらいなの??」

それはあくまで本当に素朴な疑問だったのだが、どういうわけか、ノノは顔を真っ赤にして口ごもってしまったのを覚えている。
でも、それを見て、これも『好き』の形なんだなぁ、と思った。

…二つ目は、リモスおねえちゃんと話をしていた時。
最近、おねえちゃんの話の中に、ISHでは聞いたことのない、同じ人の名前がたくさん出てくるようになった。
その人のことを話しているときのおねえちゃんは、やっぱりすごく楽しそうで。
でも、少し恥ずかしそうで。

きっと、これも『好き』の形なんだろうけれど。
よく、わからなかった。

……………

「…今日はまた随分答えに困る質問をしてくるんだな…」

はかせはそう苦笑して言うと、しばらく考え込んで。

「アルには、その人のことを考えるだけであたたかい気持ちになる人がいるか？」

そう聞いてきた。
しばらく考える。
自分の思う『好き』な人の顔が、ぽんぽんと脳裏に浮かんでは消えた。

そして、最後に。

「…あ」

「ん？」

「…いる」

いつも、自分のことを気にかけてくれる人。
自分が『いもうと』みたいだから気にかけてくれるのかもしれないけど。
それでも、その人の口元が笑う場面を思い返すと、確かに気持ちがあたたかくなる。

「はかせ」

「ん？」

「…そのひとに、とくべつにすき、っていうのは…いけないこと？」

はかせはまた少し考え込んで。

「言うことは別に悪いことじゃないが…もし、相手がアルのことを同じように『特別に好き』と言ってくれなかったときには、アルは悲しい思いをするかもしれないぞ」

そう、言ってくれた。
『特別の好き』というのは、そういう難しい気持ちらしい。

それでも。

……………

はかせとのその問答から数日後。

「…アル？」

「!!」

「最近、あまり顔色が良くないようだけど…大丈夫か？あのトージョウという地域に行ったことで疲れたのか？」

そう、声をかけてきてくれたのは、アイおにいちゃん。
…また、心配をかけてしまった。
その問いに、アルデラは首を横に振る。

「…ううん、ちがうの、あのね、アイおにいちゃん」

「ん？」

「…アル、『とくべつにすき』なひとがいるの」

それを聞いたアイおにいちゃんは、持っていたものを落としそうになって…すんでのところで持ちこたえた。
仮面をつけているために表情はよく分からないが、今まで見たことのないような、難しい表情をしている。

「…へ、へぇ…どこの馬の骨だい、そいつは」

馬？
よくわからない。

「…アイおにいちゃんって、ねこさんじゃないの？おうまさんじゃないよね？」

「え？」

「アル、はかせにきいたの…『とくべつなすき』のこと」

アイおにいちゃんは、放心したように黙っている。

「それでね、とくべつにすきっていうのは、あいてのひとがおなじようにおもってなかったら、かなしいけど、すごく、うれしいきもちなんだって」

「…」

「…アル、おにいちゃんのこと、とくべつにすき」

…伝わらなくても。
…相手が同じ気持ちじゃなくても。

それでも。
自分の気持ちは、素直に表に出すのが、このアルデラという少女だった。




……………

うおおおおおなんだこれ長い!!!!
戦闘描写より長いってどういうことなの…。
そんなわけで、アルが自分の気持ちを自覚してナチュラル告白かましましたってSS!!
イヅナさん・アイロニカさんと、お名前だけリモスさん・リトさん・ノノさん・ジルニトラさんお借りしました!!