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タリス4本目!
左目を失い、治療してきた後のお話。
懲りもせず前線に出る気のようです。
まだまだ流血描写注意報!
追記から!

「…迅速な処置、感謝する」

そう、処置してくれた医務官に礼を言うと、それ以降の相手の言葉を遮断するように処置室の椅子から立ち上がる。
…あぁ、なるほど、遠近感がまるで掴めない。
近接戦闘が主体の私にとっては、片目だけでも致命傷だったということか。

拠点内で、ある程度遠近感を掴めるようになるくらいまでは休んでいるのが普通だろうが、そんなことを言っている場合ではない。
こうしている間にも、戦況は激化する一方だろう。

「(…今のままでは)」

正直、何の役にも立たないかもしれないが。
それでも、兵が一人いればそれだけで弾よけくらいにはなるだろう。
元の通り腰に軍刀を二本(一本は構えられないのだが、どうにもおさまりが悪い)差し、戦場へと出る。

……………

シンオウ。

先ごろ交戦した周辺は…とりあえず避けておいた方が無難だろう、と思いつつ、周囲の敵影を探る。
そんな折、ガサリ、と影の動く音。

「敵か!?」

振り向いて刀を向ければ、若干驚いた様子のヒムカがそこにいた。

「やだなタリス、俺だって!ほらよく見、て……?」

私の顔を見たヒムカの顔が、みるみるうちに何とも形容しがたい表情に変わっていく。
さっき会った時、スガ先輩はそんなこと何も言ってなかった、と、そんな旨の言葉をつぶやく。
…なるほど、スガは何も話さなかったか…。
それでいい、こんなこと…そう周囲に言いふらすものでもない。
…が、ヒムカ本人はそう簡単に納得してくれないようだった。

「…それだけ包帯巻いてるってことは重傷だよね?もうこの下見えないんだよね?」






「それで、俺はどいつを殺せばいい?」

緊迫したセリフに似合わないほど無邪気な笑みを浮かべ、茂みから現れた敵影を横目で一瞥すると。

「…失せろ」

巨大な鈍器を振りかざすと、みしっ、と嫌な音を立てて、その敵影が崩れ落ちる。
一瞬で広がる紅が、先ほどまでヒトの形をしていたものを染め上げた。

…少し前から気づいていた。
こいつは…戦闘という行為そのものを楽しんでいる。
タリスの目をつぶすくらいだから、こんな骨のない奴じゃないよね?という言葉から察するに、私の左目を奪った相手を殺すまで、殺し続けるのだろう。

そんなことを、思っていたら。

「…まだ伏兵いたんだな…OK」

大振りの銃を構えなおして、

「全員、殺す」

笑う。

…気づけば、結構な数の相手に囲まれていて、どうにもこのまま離脱させてはもらえなさそうだ。
まだ距離感には難があるが、右手で刀を構える。
…が、私の左目に巻かれた包帯を認めた敵は、私の左を急所として突っ込んできたらしい。
振り返り、その姿を認めてからでは間に合わない。

「タリス!!!!!」

ああ、この距離では、と思った刹那、声と共に飛んできた影に、向かってきた相手は吹っ飛ばされた。
その気配は、普段と同じ。
まとう殺気は、先ほどまでと同じ。

「俺が」

ザッ、と左側に回る音がして。

「タリスの左半身になるよ」

この間のシンオウ戦で見たのとはまた別な意味で、普段のお前は本当に『お前』なのかと問いたくなる、決意のような声。
一度目を閉じ、ありがとう、と呟くと、右側の相手に専念する。
今のこいつになら…私は、安心して自分の半身を預けられる。

……………

「…ようやく、掃討完了か…」

「どう?タリスをそんな風にした奴はいた?」

その問いに、小さく首を横に振る。

「…いや…なぁヒムカ」

「?」

「…私は…今、お前が私の左半身になってくれると聞いて、心底うれしいと思った…だが、だからこそ、お前に余計な命を奪ってほしくはない」

甘いと罵りたければ罵るといい。
それでも、私のために殺すと言われたら、複雑な気持ちがするのは確かで。
じわりと湧き上がるような痛みを、左肩に感じた。

「…ちっ…」

体の活動限界が近い。
これ以上前線に出ても、弾よけにすらなれない。
現に、今私はそうあれていない。
気づくと、腰にさしていた方の刀のつばが割れている。
割れた半分を、そのままヒムカに握らせた。

「え…?」

「…正直、もう左半身が使い物にならん…医務官に厳重注意を食らうのを覚悟で拠点に戻る…それまで、それを持っておけ、拠点に戻ってきたら修理をするから…その時に、返しに来い」

自分でも、何を言っているのだろうと思う。
だが、せめて戦場に何かを預けたいと願い、自分の気持ちを形にしたいと考えた結果、不器用な私にできることは、これだった。

「…約束してくれ、無駄に、殺すな」

はっきりと言う。
国のためでなく、私のために殺すその気持ちが、嬉しくも辛い。

「…了解、ねぇタリス?」

「なんだ」

「もし俺とタリスの立場が逆だったら、どうしてた?」

そんなこと、思いもよらなかった。
完全に想定の範囲を超えた質問。
だが、答えは自分でも驚くほどに簡単に出た。

「…私も…お前と同じだったと思う」

そう一言返すと、また普段どおり笑った。

「そっか、それが聞ければ十分、任してよ、絶対返しに戻るからさ!」

そう言って、刀のつばを懐にしまい、もう少し敵陣へ入り込もうとするヒムカを見送る。





……………

とんでもなく長いですが打てた!!!!
左半身がいろいろと使い物にならないタリスをヒムカさんがサポートしてくれるって言うから!!!!
書いてて楽しかったですありがとうございました!!
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電気蜘蛛は毒蛇の夢を見るか?
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